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冷香とヴィルさんのてくてく戦記!

2009.02.12 *Thu
とある片田舎、彼は一人夕日の中風を感じながら辺りを散策していた。辺り一面これといった建造物がなく、解放的な気分になれる場所だ。そして種類もわからぬ草花の匂いが混じり合い、なんとも言えぬ哀愁を誘う。
彼がそんな懐かしさのような、一種の哀しさのようなものを感じていると、誰もいないに関わらず声をかけられる。
「冷香よ、こんな所で油を売っていていいのか?」
その声を聞いて、思索に耽っていた彼……。冷香は少し間を空けて答えた。
「別にかまわないだろ? 当面の目的がないだけで、大元の目的まで忘れてしまった訳ではないんだからな」
「……お前と契約していくばくか経つが、本当に掴み所がないな、お前は。契約当初は大願の成就を最優先事項としていたというのに」
「心にゆとりが出来たのさ。そういうお前……。“戦乱神”スサノオ様は相変わらずだな」
「もう一つわかった事がある。知り合いには遠慮をせぬ」
「そいつは御愛顧。……? なぁ?」
「……気付いたか。そうでなければ困るが。そうだ、お前の考えている事は大方正しい。でたぞ」
主なき声がそう告げると冷香は身を屈め、数瞬目をつむる。そして、告げた。
「自在法・地空滑氷」
ここに一般的な第三者がいたのなら、冷香の姿は消えたと認識するだろう。それほどまでに自在法を発動した冷香は早い。
「こんなところで徒の反応があるなんてな~。あいつかな?」
「いくら変わり種の奴でも極東の僻地まで足を運ぶとは考えにくい。別の王だろう」
「そいつは残念。さてさて、お仕事しましょうかね」
彼等がそんな言葉を2、3交わすと、一瞬で目的地に着いたようだ。だが……。
「なんだ、もう先客がいるじゃん」
「言ったであろう。お前の言っている事は大方正しいと」
「俺もまだまだだねぇ。これほどまでの同業者の気配を、これだけ近づかなければ気づけないなんて」
「気に病むことはない。これは恐らくあいつだ」
「知り合いか? あんたの知り合いなんて珍しいな」
「とりあえず、敵は近辺にはいないだろう。自在法を解いても構わん」
「そうかい。まったく、これを無駄に使える程の余裕なんてないんだがねぇ」
冷香が肩をすくめ、溜息をつくと徐々に冷香の移動速度が低下する。低下すると言っても、乗用車並みの速度はでているのだが。
冷香が敵の気配を感じたポイントまで近づくと、メイド姿の女性が一息ついたといった具合に、岩に腰かけていた。休憩をしているように見えるが、一分の隙もない。今の彼女には後ろから襲いかかっても反応される。それが冷香が岩に腰かけている女性に抱いた印象だった。
どうやら、冷香の接近にも気付いていたようだ。女性の方から声をかけてくる。
「御苦労様であります。ここにいた徒は私が討滅しました」
「どうも、貴女のようなお強いフレイムヘイズがいたのなら、急いでくることもなかったな。俺は“戦乱神”スサノオのフレイムヘイズ、『氷麗の射主』冷香です」
軽くお辞儀すると、女性の方は精密機械のようにお辞儀をし、名乗り上げた。
「申し遅れました。私は “夢幻の冠帯”ティアマトーのフレイムヘイズ、『万条の仕手」ヴィルヘルミナ・カルメルであります」
「不会久遠」
「確かに久しいな。先の大戦以来か?」
 冷香は両手を合わせ、感心したようにうなずき、
「そういえばここに来るときスサノオは相手を知っているみたいな口調だったな」
「ああ、わずかな期間だが共に戦ったのだ」
「へ~……。まぁ積もる話もあるだろうが、今は置いといて。
えっと、カルメルさん、とおよびして良いですかね? カルメルさんが徒を討滅してから修復までにかかる時間がやけに短くないですか? 俺もゆっくり来ていたわけじゃないのに」
そう言われると、ヴィルヘルミナは少しの間逡巡すると困ったような顔になる。冷香はその反応を訝しみ、追及してみることにした。
「なにかまずいことでもあったんですか? なんか浮かない顔をしていますけど」
「そうでありますね……。貴方からの意見も聞きたいであります。少し私の話におつきあい願います」
そういうとカルメルは一拍間を空けて、
「どうも私が討滅した徒の様子が妙であったのであります。どうもやり方がまだるっこしいというか、作業に効率性がないとでもいいましょうか。本来ならもっと大量に搾取できたはずなのに、あえて非効率的な方法をとっていたのであります」
やれやれといった風に首を振ると、冷香の方に視線を向ける。意見を求めているのであろう。冷香は目をつむり、自分がこの場で最も適切だと思う回答を探す。そして、
「フレイムヘイズに発見されるのを恐れて、見つかりにくい非効率的な手段をとっていたという線ではないでしょう。なぜなら遠方にいたはずの俺が気づいてしまっていますから。それなら一体何がしたかったのか? 俺はその場にいたわけじゃないので、推測になってしまいますが、恐らく、ここにいた徒の目的は存在の力の収集じゃあない、別のなにかでしょう」
「別の何か……、でありますか? それは一体?」
「いや~、その場にいなかった身としてはこれ以上は何とも。そういえば」
 冷香がさらに質問をしようとしたが、言葉は区切られた。なぜなら……。
「どうやらまだ一匹いるようですね。…………東に800mってところかな」
「まだ残党が……。現場に急行するであります」
 ヴィルヘルミナが移動の体制をとるが、冷香はそれを片手で制し、
「大丈夫、この距離なら十分射程圏内です。スサノオ、殺ろうか」
「仕損じるなよ」
「誰に言ってんだ。俺がしくるわけないだろ?」
 冷香が不敵に笑うと虚空から巨大な弓が出現した。
宝具“ミストルテイン”
これがフレイムヘイズである冷香の使用する武器である。このミストルテインを実際に間近で見た者は大変驚くであろう。通常の長弓は7尺(1尺=約30cm)前後であるのに対して、冷香のミストルテインは優に15尺を超える。もはや人の身では構えることすら許されない。まして、その状態で狙いをつけるなど到底不可能である。
しかしフレイムヘイズである冷香は、人と紅世に仇なす存在である“徒”に対して、人の身でありながら、人外の力を行使する。それが使命であり、冷香自身が望んだ道だ。
 ミストルテインのズシリとした感触に満足げに頷くと、膝を折り曲げ跳躍の準備態勢に入り、きっちり3秒建ってから溜めに溜めた力を一気に爆発させる。その時の冷香の上昇速度はとても速く、それは跳躍というより飛翔と言った方が適切であろう。
 50m程上昇した冷香は弓を構え、肉眼で確認することが出来ないほど遠方にいる、気配だけしか感じられない標的に対して狙いをつける。そして弓矢を装填せず、弦を引き伸ばし、最大限可能と考えられる位置まで引き延ばすと、一気に弦を離した。弦は元の戻るべき定位置まで戻ってなお、衝撃を殺しきれずに震えている。
 だが、弓矢を装填していない弓を射っても意味などない。それなのに『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルは驚愕をあらわにした。
「これは……。存在の力を押し固めた矢の大量掃射……、でありますか? こんな莫大な数の存在の力の矢を軽々と……。通常の弓矢に換算して8000本強、それもとんでもない威力であります。しかし!」
 キッと冷香を睨み、
「封絶も張らずに、こんな高威力の攻撃を広範囲にばら撒いてしまっては、周辺への被害は尋常じゃないはずであります!」
 そう、冷香がしたことは見えない弓矢を徒の近辺に対して、雨のように降らせたのだ。これでは徒が行う近辺への無差別攻撃に大差ない。
 それでも冷香は狼狽したヴィルヘルミナに笑いかけ、東を指差し、
「よく見て……、この場合は感じてください、かな? 俺が放った弓矢は本当に広範囲に、無作為に、無慈悲にばら撒かれただけですか?」
 先ほど、眉間にわずかばかりのしわを寄せていたヴィルヘルミナは、落着きを取り戻し、冷香に支持された方角を見つめる。
「すべての弓矢が……、一点に収束しているのでありますか、これは?」
「ええ、そんなところです。俺が標的と定めた目標物に、すべての弓矢が突き刺さるんですよ。複数をターゲットにすることも可能です」
 言い終えると、冷香は地面にゆっくりと降り立つ。手首を回し、クールダウンを開始する。
 その平生と変わらない動作をする冷香を見て、ヴィルヘルミナは再び、今度は表情に出さずに驚いた。
(あれほどの力を一気に使ってまだ余裕があるとは……。末恐ろしいものがあるであります)
「ん~、にしてもやり過ぎたかなぁ。8000もいらなかったよなぁ」
「1000でもこと足りたろうに。力のコントロールはこれからの課題だな」
「うへ~……。にしてもシャワーを浴びたいわ。カルメルさん、近くに体を休められるようなところってないですか? シャワーを浴びられると最高なんですけど」
「それなら少し行ったところに町があるであります。ご一緒しますか?」
「あー、ちょっと確認したいことがありまして。それを確認してから行こうとおもうので、町の場所と宿泊施設の場所を教えてもらえますか?」
「了解しました。それでは、また後でお会いしましょう」
 ヴィルヘルミナから宿泊施設の場所を聞き出すと、冷香は東の方角に足を向ける。討滅した徒の事後処理に向かうようだ。だが、封絶が張られていない場所でできることは限られているのだが。
 現場に向かう途中、冷香はふと疑問に思ったことを自分の契約主スサノオに問いかける。
「カルメルさんが言ってた妙な徒の目的ってスサノオは何だと思うよ?」
 若干の沈黙が続いた後に、老練な声が冷香の問いかけに答える。
「そうだな、私が徒を統べる王の立場であったのならば……。目立つ徒を使うのは陽動くらいであろう。それか、まだこちら側に来たばかりの王であろうな」
「名のあるフレイムヘイズを消滅させて、名を上げようっていう馬鹿か。あーあ、後者だったら楽なんだけどなぁ。俺はやっぱり前者だと思うぜ。こんな一地方に徒の群れが複数来るなんて超低確率だからな。目的を持った王がこの土地に何か仕掛けているっていうのが妥当な線だろう」



 話をしているうちに目的の場所に辿りついたようだ。あたりは閑散としていて、特に目立つようなものは存在しない。秋の風に草々がなびいていて、いいようのない寂しさのようなものを演出している。
「特に目立つものはないかな~。これなら普通にカルメルさんと町に行った方がよかったかね?」
「ぼやくな、これも使命のうちだ」
「はいはい……。ん? なんだ?」
 草むらの中に落ちている何かが、夕日を反射させたようだ。普段なら気に帰ることはないだろうが、ここは徒を討滅した現場だ。冷香も気にかかった事柄はすべて確認せざるを得ない。
「んー、これはガラス玉か?」
 冷香が見つけたそれは、拳くらいの大きさの赤い玉であった。その赤い玉は、他の宝石と並べても遜色がないくらいに美しく、本当の宝石のようである。
「んー、材質がまったくわかんねーな……。スサノオ、これがなんなのかわかるか?」
「いや、詳しくはわからん。だが、ただの綺麗なガラス玉というわけではあるまい。微弱ながら存在の力を感じる」
「ということは、これなんかの宝具ってことか?」
「そういうことだ。だが、我にも使い道に皆目見当もつかん。それほどに微弱なまでにしか力を感じられんのだ」
「ここに落ちていたってことは徒が落としたものってことだよな。うん、こいつは当たり……、かな?」
 冷香は手のひらに収まった宝具を見つめ、静かに微笑を浮かべる。どうやらここまでの道のりはまったくの無駄であったというわけではなかったようだ。
「さぁってと。カルメルさんに教えてもらった宿に向かうとしようかな。汗も流したいし~」
「体の汚れを落とすなら私の力を使えば効率的であろうに……」
「いいんだよ、これは俺の気分の問題なんだからさ」
 冷香はスサノオの身も蓋もない言葉を一刀のもとに切り伏せ、カルメルに教えてもらった宿に急ぐ。

もう日が落ちかけ、長い……フレイムヘイズにとっての長い夜が訪れようとしていた。


 完全に日が落ち、辺りは暗闇に包まれていた。急いだ甲斐もあり、日が完全に暮れる前に冷香は町に入ることができたようだ。
「あー、疲れた……。にしてもこの規模で町って言っていいのかなぁ?」
「固有名称など気にかけても意味などあるまい。今は彼女らに教えてもらった宿に行けばよい」
「はぁ、そうだな……」
 町というには小さい町の中を彷徨い、精神的にぐったりと疲れた冷香はようやく宿に辿り着いた。人外の力をやすやすと使いこなす、強靭なフレイムヘイズも同じような景色が続くところを、延々と歩き続けるのは精神的にくるものがあるのだろう。
「これは、ペンションか? まぁ雨風がしのげて、温かい食事に寝心地がいい布団があればなんでもいいや」
「それは欲を出し過ぎていると思うのだが」
「いいだろ~。世界を救っているのだからこれくらいのことは許されても」
 軽口を叩きながら、今晩世話になる宿へと足を踏み入れる。
 宿の中は木造建築独特の温かみと、リラックス効果が有りそうな木特有の匂いで包まれていた。
「なんだ、しょぼそうな宿かと思ったら中はいい感じじゃないか。気分も落ち着くし中々に俺好みだ。さすがカルメルさん、いい趣味しているぜ」
「そこは‘万条の仕手’の手柄ではないと思うがな」
「まったく、いちいち俺の言うことにケチをつけなくてもいいだろ。おっ? カルメルさんもここに泊っているんだ。拾った宝具について相談でも……」
 冷香が大きな存在の力に気がついたようだ。しかし、そこまで言いかけ宿の壁にかけてある時計に目をやる。時刻は11時を過ぎようとしていて、今から尋ねるのは失礼に値するだろう。
「もう夜分遅いし、急ぐ必要もないか。明日の朝にでも報告しようかね」
こうして冷香は思い直し、自分の部屋で休息についた。

しかし、事態は二人のフレイムヘイズを待たずに刻々と進行する。それはせき止めていた水が一斉に溢れ出すように、怒涛の如く。

「起きろ、冷香!」
「……、無理」
「寝ぼけている場合か! 襲撃だ!」
「……何だと?」
 時刻はまだ3時と、辺りは寝静まっている。この時、寝ボケている冷香を誰が責められよう。
「わかった、すぐに向かうぞ。……向こう側ももう少し空気を読んで欲しいもんだ」
 ぼやきながらも急いで用意を整え、迅速に現場へ向かう。
「にしても妙だな。今のところ封絶を張っている気配がないんだが」
「確かに感じぬな……。これは‘万条の仕手’が言っていた妙な徒の一派であろう」
「そうかもな。っと、カルメルさん!」
 現場に向かう途中、同じ宿に滞在していたカルメルを発見したようだ。急ぎ足で現場に向かいながら必要最低限の情報交換をこなす。
「にしても昨日件といい、この件といい、この徒どもの狙いが全くわかりませんね。逆に何企んでいるのか不気味でもある」
 冷香は嘆息しつつも、先輩であるフレイムヘイズに疑問を投げかける。
「そうでありますが……。今は現場に向かうことが優先事項であります」
「そうでしたね、急ぎましょう」
 そんなやり取りをした後、冷香達は黙々と現場に急行した。
 待ち伏せなどを警戒しつつも迅速に向かった現場では恐るべきことが起きていた。
「徒が……、封絶も張らず、存在の搾取もしないで、人を……、拉致……しているのか?」
 冷香信じられないと言った面持ちで、目の前の出来事を呆然と見守っている。それに比べ、ヴィルヘルミナは冷静に、
「この場で力を搾取せずに人間を連れて行こうとするということは、もしかしたら王の元に連れて行くかもしれないであります」
「隠密追跡」
「え、ええ。わかりました。でも、なんだって一体普通の人間なんか拉致しているのでしょうか?」
「普通の人間……でありますか」
 ヴィルヘルミナは少し考え間をとったが、首を振り、
「いえ、なんでないであります。それより、気づかれないように急ぐでありますよ」
 そうして彼らは徒に気付かれないように追跡していった。時折、徒が興奮でもしたのか、奇声をあげる。そのたびに木々が揺れ、小鳥が羽ばたいていった。
「えーりぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいん!!!!」
「だからゆかりんは俺の正妻だって言ってるだろうがぁぁあああああああああ!!」
「ロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリロリぃいいいいいいい!!」
「ツルペタなんぞ認めん!! それはただの洗濯板だぁああああああああああああ!!」
 奇声をあげるたびに、驚き、慄くフレイムヘイズ2名。彼らは首を傾げる。
「あいつらは一体何を言っているんだ……。まったく理解ができん」
「獣が吠えてもそこに意味が介入することはないであります。気にせず追跡を続けるであります」
 徒が何回か叫び、急に静かになる。喉でも枯れたのであろう。その後、辺りは静寂に包まれた。
追跡をし続けること約20分。山間部、切り立った崖の下に大きな横穴を発見する。これは、自然に出来た洞窟であろう。
 徒がそこに入っていくのを確認したのち、ヴィルヘルミナが冷香の方に向き直り、
「冷香殿はここで待機をしていてほしいであります」
「え? カルメルさん、何を言って……」
「あの明らかに狭そうな洞窟内部では長弓を使用することは困難であります。ならば、緊急時に備えてのバックアップとしてこの場に残って欲しいのであります」
「救済処置」
「だから、俺の宝具は」
「時間がないのであります。頼みましたよ」
 冷香が何か言いかけるも、ヴィルヘルミナは事を急ぎ冷香にその場を任せ、洞窟内部に潜入していった。
「……なぁ、どうするよ、スサノオ?」
冷香が自分の契約した王に問いかけると、すぐさま返答が返ってきた。
「言うまでもあるまい。我らは、我らにできることをこなすまでだ」



 内部に潜入したヴィルヘルミナは、今日何度目かの驚きを露わにしていた。
「何でありますか、この近未来的な構造は……。外の文明より余程発展しているであります」
 ヴィルヘルミナが潜入した洞窟内部は、最初は自然そのものと言った構造だったのだか、少し進むにつれて違う一面を醸し出していた。ヴィルヘルミナが指摘したように、明らかに人の手が加えられていたのだ。
 それは、まるで潜水艦内部のように、機械の一部らしきコードや配線、配管がむき出しになっている。潜水艦のようにと言っても、ヴィルヘルミナの進んでいる通路は、潜水艦の通路とは比べモノにならないくらいに横広で高さもあるわけだが……。
 薄暗い通路を足元に注意しながらカルメルは進む。
(それにしてもこの王は一体何を企んでいたのでありましょうか? あの徒共は無差別に人間を拉致していたわけではないのであります。私が見る限りでも、普通の人間よりも存在の器が大きかった……。これは最早何かしらの企みがあると言っても過言ではないのですが……)
 ヴィルヘルミナが通路の暗さに徐々に慣れ始め、物事を整理する余裕ができたころ、いきなり視界が広がった。通路の出口に出たのであろう。
 そこはとても広く、半径50メートル程のドーム状の空間である。その中心に複数人影が見える。だがその人影はまったくと言っていいほどに動かない。恐らくは町から無理やり連れてこられた町の人々がここに捕らえられ、無力化されているのだろう。
 ヴィルヘルミナが町の人々に気づき近づこうとした時、丁度ヴィルヘルミナとは反対側から、地響きのような唸り声が響く。
 それは粗雑で乱暴で、知性を感じさせない唸り声だが、人が本能で畏怖を抱いてしまうような、とても力強いものであった。
「おいおい、教授……。思いっきり敵を招き入れてるじゃねぇか! どういうことだぁ、あ!?」
「おやおやぁ、私の『我学の結晶エクセレント2525――電脳のお友達』がおぉ気にしぃーめませんでしたかぁ?」
「気に入る、気に入らない以前に、フレイムヘイズに侵入されてるだろうがぁ!! 計画に支障が出たらどうする気だ、教授」
「しぃーんぱい無用ですよぉ、‘搾取の大器’ザイルぅ。私の『我学の結晶エクセレント66666――世界喰らい』はたかがフレイムヘイズ一人ごときにはとぉめられませぇーん!!」
「‘探耽求究’ダンタリオンでありますか!? 考えられる限り、最悪のケースであります……」
 教授と呼ばれていた王を見て、ヴィルヘルミナの顔が絶望一色に染まる。
 このダンタリオンと呼ばれた王は、『我学』という独特の発明品を生み出す。そしてこの王は己の実験欲を『我学』で満たすことしか考えていない。その実験の結果、世界が滅びようが、自分が討滅されようが構わないという、王の中でも最たる変わり種である。
そのことを知っていたヴィルヘルミナが、悲観的になってしまうのは無理もない。
「ったくよぉ、あちらさんはあちらさんで俺にはまったく興味なしかよ。あぁ、むかつく。世界の全てが俺様に喧嘩を売っている気がするぜ……」
「ごあぁんしんくだぁーい、ザイル。もう少しで全てがあぁなたのものになるのでぇーすからぁ」
「そうは言ってもこの不快感は収まらねぇよ。というか教授、お前もいら立ちの要因だということに気づけ」
「んん~辛辣ですねぇ。まぁいぃーいでしょう。私は『世界喰らい』の最終調整に入りますので、‘万条の仕手’のお相手を頼みましたよぉ」
 そういうとダンタリオンは、再び来た通路を引き返して行ってしまった。
「はいはい……。まったく、天才……いや、天災の感性はいまいちわからん。だがまぁ遊ぼうぜ、フレイムヘイズの姉ちゃん?」
 ヴィルヘルミナは改めてもう一人の王を観察する。
 髪の色は赤黒く、その長さは腰にまでとどこという長さ。そして身体つきは筋骨隆々としていて、歴戦の強者としての風格を感じさせる。白い儀服のようなものを着こみ、肩から先の布は取り払われていた。
 ザイルと呼ばれていた王の顔が歪んだ様な笑みの形をかたどった後、ヴィルヘルミナの方に猛進してきた。
「くっ、とにかくもう一人の王を始末してしまうであります!!」
「瞬間討滅」
「言ってくれるじゃねぇか!!」
 接近してきているザイルに対し、ヴィルヘルミナは両手からリボンを放つ。1本のリボンは直線的にザイルへと飛んで行った。
「リボンで戦うとはフレイムヘイズ様は中々に優雅だねぇ。だが、俺をなめるのも大概にしろや!!」
 ザイルが吠えると、地面を一蹴り宙に舞う。ザイルに向かって飛ばされたリボンは標的を失い地面に突き刺さってしまった。
「戦闘と言ったら拳と拳のぶつかり合いだろうがぁ!!」
 空中で反身を捻り、力を溜める。その動作に焦ることもなく、
「それが浅はかだと言うのであります」
 地面に突き刺さっていない方のリボンが空中で身動きの取れないザイルの足に巻きつき、そのままザイルを地面に叩きつけた。
「今は‘探耽求究’の企みを潰すことを優先するであります」
「至急急行」
 地面に叩きつけたザイルを放置し、多少焦りながらダンタリオンの元に急ごうとするヴィルヘルミナ。
 だが、
「いくらなんでも俺の事を見くびり過ぎだぜ……」
 ダンタリオンのもとに向かおうとしていたヴィルヘルミナの視界が突如暗転する。ザイルの蹴りによってドームの壁に叩きつけられてしまったのだ。
「まったくよぉ、俺のことを舐めすぎだろうが。だが……。俺の蹴りを受けてまだ意識があるのは評価してやってもいいが」
「くっ……、浅かったでありますか……」
 ザイルはヴィルヘルミナを嘲笑し、
「俺にやられちまうような奴が、教授の元に辿り着くことなんてできねぇよ。まして、その計画を潰すなんてもってのほかだ。……全力でこいや」
 壁に叩きつけられた衝撃のせいで、息が絶え絶えになりながらも立ち上がり、ザイルを睨みつける。
「どうやら、甘かったようであります……。ティアマトー……」
 直後、ヴィルヘルミナの体がリボンに巻きつけられる。それはまるで、繭の中に籠る幼虫の様であった。
わずかばかりの時間が経過した後、リボンの戒めが解かれた。
 リボンの繭から出てきたヴィルヘルミナは身体的に大きな変化は訪れていない。だが、一点のみ外見が大きく変わっている。
 その一点とは、
「おー、随分といかつい仮面だな。まぁ、全力でくるのならばなんでもいいけどな」
 ようやくやる気を出したらしいヴィルヘルミナを見て、新しい玩具を見つけた子供のような笑みを浮かべる。
 その言葉に返答することもなく、ヴィルヘルミナは動き出す。
 直後、ザイルの視界がヴィルヘルミナのリボンによって覆われる。
 先ほどは2本のリボンを飛ばしたのに比べ、今度は5本のリボンがザイルを襲う。
「さっきとは量も質も段違いじゃねぇか!! 嬉しいねぇ、こういうのを待っていたんだよ!!」
 2本のリボンがザイルのいる場所に直線的に向かう。それを軽くバックステップでかわす。今度は両側、ザイルの死角から足を狙い飛来する。
「っ!? ぅおらぁ!!」
 存在の力を感知したザイルは、腰を落とし、左足を狙ったリボンを右足で蹴り抜く。蹴り抜いたままの態勢から地面に両手を突き、軸足だった左足でもう一方のリボンを蹴り飛ばす。
 この一連の動作はあまりにも流麗で、当事者以外にこの動きを見ているものがいたら、舞踊を連想するだろう。
「なんだなんだぁ!? お前の本気ってのはこんなもんなのかよ!!」
「……もう一度言いましょう。浅はかだと」
「なにを言っ」
 そこでザイルは口を閉じる。正確にいえば閉じざるを得なかった。

 ヴィルヘルミナのリボンが自分の首に巻きついていたからだ。

「……!!」
「信じられないといった顔をしていでありますね」
 ヴィルヘルミナは仮面越しにザイルを見つめながら、
「それでは私は先を急がせていただくであります」
「…………」
 何か口を動かしているが、リボンが首を圧迫しているためうまく発音できていない。それでも、屈せずに口を動かし続けるザイル。そして、絶え絶えの声で、
「だから、俺を、舐めすぎだ、フレイム、ヘイズ……」
 突如、ヴィルヘルミナの白いリボンがザイルの触れたところから、まるで熱した鉄板の上に落ちた氷の様に、シューといった音を立てながら消失していく。その現象を見たヴィルヘルミナは、急いで自分の手元からリボンを切り離す。
「一体何が……」
「お前の攻撃は無駄だった。それ以外に言葉が必要か?」
 ザイルが下卑た笑みを浮かべ、空中からヴィルヘルミナを見下す。両者の間にしばしの沈黙が流れたが、すぐさまその静寂を打ち破るかの様に、
「ザイルぅ、まだごぶじでぇーすかぁ?」
 ダンタリオンの声がドーム状の声に響いた。
「『我学の結晶エクセレント66666――世界喰らい』の最終調整が終了しぃーましたぁ!! なのでそこにいる人間に『空間喰らい』をいんすとぉるしてくださぁい」
 その言葉を聞いて、面倒事を押しつけられたような顔をして頭を掻くザイル。
「こっちはフレイムヘイズの姉ちゃんの相手で精一杯だ!! そっちの方でなんとか打ち込んでくれや!!」
「わぁかりましたぁ。それではそちらの方にドミノをむぅかわせまぁす。こちらの予備の『空間喰らい』を打ち込んでしまってかまいませんねぇ?」
「ああ、構わん!!」
 声を張り上げていたザイルは、ヴィルヘルミナの方に向き直り、
「待たせたな、待っていてくれてありがとうと言うべきかな?」
「っ!!」
 もちろん、叫んでいる間隙だらけであったザイルの事をヴィルヘルミナが黙って見つめているわけがない。……それはヴィルヘルミナが正体不明の黒い球体に囲まれていなければの話だが。
「ちなみに今あんたの周りを囲んでいるのが俺の力でもある『崩壊の種子』だ。そいつは少々扱いが難しくてなぁ……。周囲の存在の力を捻じ曲げ、空間を歪ませちまう。その結果、そいつが発動しちまえばその空間そのものがなくなっちまう。……どうだい? 面白いだろ?」
「なるほど……、先ほど私のリボンを消失させたのはその力というわけでありますか……」
「ご明察。本来なら、俺は拳での殴り合いの方が好きなんだけどなぁ。これは俺の本気という訳だ。あんたは凄いよ、この俺様‘搾取の大器’ザイルにこの力を使わざるを得ない状況に追い込んだのだからな」
 ザイルは心底楽しげな顔をして、ヴィルヘルミナを称える。そして、
「だが、そろそろ幕引きの時間だ。あんたの頑張りは認めてやるからもう散っちまえよ!!」
 そのザイルの叫びに応えるかの様に、ダンタリオンが去っていった側の通路から奇妙な徒がやってきた。
 その容姿はオレンジ色のドラム缶に半円の頭をつけ、両脇……、即ち人間の腕に値する部分にアームを装着している。その先の手はマジックハンド仕様だ。まるでその姿は、ふざけたコメディチックなロボットそのものである。
「博士、あの標的達にこれをぶちこめばいいんでございますよね?」
 妙に謙った口調の質問に、これまた独特なしゃべり方で返答される。
「そぉです、ドォォミノォォ!! あれに私が『崩壊の種子』に手を加え生まれ変わった『我学の結晶エクセレント6666――空間喰らい』を植え込めば『世界喰らい』を発動させる準備が整いますよぉ!」
 ドミノと呼ばれていた徒の手先、つまりマジックハンドの先を注視すると、紅い宝石のような物を持っていることがわかる。あれを町の人々に埋め込むつもりなのだろう。ゆっくりとドミノは歩を進める。
「さぁて、こっちも少しは協力してやるかね」
 パチン。
 ザイルが軽く指を鳴らすと、町の人々を黒い何かが包み込んだ。恐らくは『崩壊の種子』が暴発するのを防ぐ、未知の封絶であろう。黒い封絶に包まれてしまった人々の様子を、外からうかがい知ることは出来ない。
「させないであります!!」
 町の人々に手を出させるわけにはいかない。その考えだけがヴィルヘルミナの思考を完全に支配していた。その焦る気持ちが、ザイルに対しての致命的な隙となっていると気づいていながら。
「やるなぁ、あの完全包囲を強引に打ち破るなんて。だがまぁ、隙だらけすぎるのが残念だ」
 パチン。
 再びザイルが指をならす。そして空間が歪んだ。グネグネと陽炎のように景色が歪み、何も見えなくなる。存在の力が消失してしまった空間に、別の場所が存在の力を分け与えるように、周りの空間も歪みだす。
この空間の連鎖的消滅の終着点は、もちろんヴィルヘルミナだ。空間の歪みがヴィルヘルミナを取り囲み、
「弾けろ!!」
 ザイルの『崩壊の種子』に存在の力を貪られた空間は、通常時と比べ大変不安定だ。その目に見えない不安定さを表現するかのように、突如空間が爆発した。もちろん火薬を使用した様な派手な爆発ではなく、常人の目には見えな存在の力が拡散したのだが。
 拡散した存在の力はザイルの意思を反映したかのように、ヴィルヘルミナを巻き込んでいった。
「こいつはおまけだぁ! しっかりとくらって潰れとけ!」
 パチン。
 今度は上空に設置してあった『崩壊の種子』が炸裂した。ドーム状の空間の天井にひびが入り、そして崩壊する。
 いくつもの瓦礫がヴィルヘルミナに降り注ぎ、押しつぶしていった。直撃していたのなら間違いなく命はないだろう。
「ザァイルゥゥ。むやみに施設を破壊しないでくださぁい!! 崩れたら一体どぉうするんですかぁ!!」
「別にいいだろ。どうせ『世界喰らい』が発動したら破棄するんだから」
「まぁだ『世界喰らい』は発動していないのですから安易な事は避けるようにしてくださぁい! ……ところで先ほどからドミノとれぇんらくが取れないのですが、あぁなたとフレイムヘイズとの戦闘にまぁきこまれでもしぃたのですかぁ?」
「ん? ああ、悪いな。あんたの助手が動き易いように、俺が独自の封絶を張った。今から解くから、連絡も取れるようになるだろう」
 ヴィルヘルミナとの戦闘で少なからず疲労したのか、少しだるそうにザイルは指をならす。
 そうすると、その音に連動して黒い封絶にひびがはいり、ガラスが砕けるような音がして黒い封絶がに消失していった。
 そして中から、ドラム缶のようなロボットの徒が姿を現した。ただ、

 ドラム缶のような体にいくつもの風穴を開けた姿で、だが。

「おいおい一体何が……」
 ザイルは理解できないといったように、ドミノを見つめることしかできなかった。
 黒い封絶が完全に取り除かれると、一人分の影がゆらりとザイルの方に向かって歩き出す。
「お前、何者だ……?」
 歩いてくる影の、ザイルに対する返答は、存在の力を圧縮した矢での攻撃であった。
 ビュッ! という鋭い風斬り音を伴いながら向かってくる見えない矢を、ザイルは『崩壊の種子』を自身の前方にばら撒き、連鎖爆滅することによって矢の侵入を防いだ。
「いいねいいねぇ。また活きが良いのがきやがった。もう一回聞くぜ。お前の名はなんだ、フレイムヘイズ!?」
 すると影は立ち止まりゆっくりと、小さく、だが不思議と遠くまで響く声で名乗り上げる。
「“戦乱神”スサノオのフレイムヘイズ、『氷麗の射主』冷香だ」
「俺の名は「興味ない」
 ザイルが名乗り上げようとすると、不意に冷香の不機嫌そうな声が遮った。
「これから討滅する奴の名などに興味はない。予定がつまっているので、押し通るぞ?」
 気に食わない。ザイルがこのフレイムヘイズに対して抱いた率直な感想がそれだった。そしてこのフレイムヘイズが苦悩する様を見たいという気に駆られた。
「はっ!! 口だけは達者だなぁ、おい!! まぁいい、遊んでやるよ。そんでさっきのフレイムヘイズのようにぐっちゃぐちゃのひき肉にしてやらぁ!!」
冷香は、そんなザイルの挑発を聞いてたちまち失笑した。
強者が自分の実力も測れない弱者に勝負を申し込まれたかのように。
己の小ささを自覚できていない小物を見かけたかのように。
 そして、自分の力量をまるで図れていない愚者を発見したかのように。
「あんたは何を愉快な勘違いをしているんだ? ……あんたはまだフレイムヘイズをひき肉なんぞにできちゃいないぞ?」
「っ!? 何言ってやがる……。さっきのフレイムヘイズは俺の力に巻き込まれてさらにがれきに押しつぶされたんだぞ!? 生きているはずがない!!」
 ザイルがそう叫ぶと、ガタリと、がれきの山の上に落ちている小さな破片が転がり落ちた。一つ転がり落ちると、それに続くかの様に次々と転がり落ちていく。
 いくつかの破片が排除され隙間が出来ると、そこから次々と長い長いリボンが這い出てくる。そのリボンがどんどん大きながれきを取り除いていく。
 ザイルはその光景を信じられないものを見たかのように立ちつくした。正確にはそれを妨害しようとすると、冷香への隙となってしまうため、動かざるをえないといった方が正確だが。
 がれきが排除されると中から出てきたのはもちろんヴィルヘルミナだ。
 彼女の特徴であったメイド服は所々破れ、肌がむき出しになり、ところどころ出血してとても痛々しい。だが、それでもなお彼女の『意思』は折れていない。
「……冷香殿? なぜここに……」
「すいません、悪いとは思っていたんですが自在法で姿を消しながらついてきてしまいました」
「しかしあなたの弓は……」
「大丈夫です。ここまで広い空間でなら十分使えますよ。それよりいけますね?」
「ええ、ここで立ち止まるわけにはいかないであります……」
「ふん、いいぜ。まとめて相手してやるよ!」
 ザイルはバックステップで大きく距離を取ると、周囲に『崩壊の種子』ばらまいた。完全な臨戦態勢だ。
「カルメルさん。俺が『崩壊の種子』を相殺するので、あいつの動きを抑えてもらえます?」
 ヴィルヘルミナは仕草だけで可能と答えると、行動に移る。
 冷香は異常な長さの弓、宝具『ミストルテイン』を構え、一世掃射にかかる。見えない存在の力の矢は、冷香の認識できる全ての『崩壊の種子』を完全にとらえ、ヴィルヘルミナがザイルに近づくための活路を切り開く。
「ちぃ!! いいだろう、こい、『万丈の仕手』!!」
 腕に巻きついたリボンを払おうともせず受け入れる。だがザイルもただヴィルヘルミナの攻撃を受けたわけではない。ヴィルヘルミナに細工をさせる前に、力の限りリボンをおもいきり引いた。
「っ!?」
 ザイルの腕力はヴィルヘルミナのそれを圧倒していた。その結果、ヴィルヘルミナはリボンを切り離すこともできずに、ザイルのもとに引き寄せられていった。
 自身の方に引き寄せたヴィルヘルミナを迎撃するために腰を落とし、
「ボディーが……」
 下からかちあげるようなボディーブローが、
「ガラ空きだぜ!!」
 ヴィルヘルミナの鳩尾に、綺麗に吸い込まれるように打ち込まれた。
「か……っは……」
「カルメルさん!!」
 冷香の呼びかけに応えることもなく、ヴィルヘルミナは地面に倒れ伏してしまった。
 パチン。
 ヴィルヘルミナに拳を叩きこむと、すぐさまザイルは指をならした。
ザイルが指をならすと彼の力である『崩壊の種子』は連鎖的に爆発する。しかしザイルの設置した『崩壊の種子』は冷香の一斉掃射で消滅している。だが、冷香の一斉掃射を逃れる場所がある。それはどこか?
「なん……だと!?」
 つまり、冷香の背後だ。ヴィルヘルミナの援護に集中し、その彼女が意識を失ってしまったのだから、背後など意識することなどできないだろう。
 背後からの攻撃が直撃した冷香は、2、3回地面をとび跳ねた。最後まで離すまいと握りしめていた『ミストルテイン』も、音もなく床に投げ出された。
 すると冷香の手から離れた『ミストルテイン』に変化が生じた。キラキラと光に包まれたかと思うと、ただのまっすぐな木の枝と化した。もう弓であった頃の面影は完全にない。
「なめ……るなよ……」
「ほぅ。その傷で立ち上がるか。つくづくフレイムヘイズというのは頑丈だな」
「俺にはまだやることがあるんでな。ここで倒れるわけにはいかないんだよ」
「よくもまぁ使命だからとかいう理由だけで立ち上がれるなぁ。だが、ボロ雑巾が立ち上がろうと、俺の計画に支障はないがな」
「そんな小さいことはどうでもいいんだよ……」
「はぁ? 何言ってんだよ、お前。フレイムヘイズの存在意義は調和を乱すものの討滅だろうが」
「生憎ながら俺はフレイムヘイズになったばかりでね……。そんな大きな使命とか言われてもピンとこねぇよ」
 それなら冷香のやるべきこととは何だろうか?
「カルメルさんは、本当に会ったばっかりの人だよ……。だけどな、あの人はほとんど初対面の俺の身を案じて、一人で危険な敵の本拠地に乗り込んでいっちまう。そしてお前との戦闘中にも町の人々を気にかけて、全力をだせていなかった。……カルメルさんは本当に優しくて誇り高い人だ。俺はな、そんな誇り高い人を傷つけたお前を殴り倒さないと気が収まらねぇんだよ!!」
 冷香にとって、世界より仲間の方が大事であった。ただそれだけの話。だが、人は守るべきものが明確であればあるほど強く気持ちを奮い立たせることができる。大切なこと……。それを理解している冷香が、どうして敵の眼前で倒れ伏すことができるだろうか。
「ふっ……。ボロ雑巾が粋がってなにができるというのだ。お前らは俺によって消される。そして世界は俺の手中に収まるのだよ」
 ザイルは、笑いながら片方の手のひらを冷香に向ける。そして淡々と、
「そろそろお前と話すのも飽きた。今から何個もの『崩壊の種子』を圧縮したものをお前にぶっぱなす。それじゃあな、『氷麗の射主』」
 先ほどばらまかれた『崩壊の種子』は拳代の黒い球体であった。だが幾重にも重なっていく『崩壊の種子』は何十倍にも膨れ上がっていく。黒く、巨大な球体はとても禍々しく、絶望を塗り固めたような存在だ。
 それを見て冷香は木の棒と化した『ミストルテイン』を手に取る。
「かつて光の神を貫いた樹木と同じ名を冠する宝具……。その真髄をあんたに見せてやろう」
「ふん、ほざけボロ雑巾がぁああああああああ!!」
 ザイルの手から人一人を簡単に飲み込むほどの大きさに膨れ上がった『崩壊の種子』がゆっくりと冷香の方に飛来する。そこまでの大きさまに膨れ上がった『崩壊の種子』の前に速度など関係ない。ただ近くのものを貪欲に飲み込み、消失させていくだけだ。
 それに対し冷香は、
「危険なる悲しみの矢」
 そう呟いた。まるで、それが起動ワードのように。ただの木の枝に見えた宝具『ミストルテイン』に冷香自身の存在の力が吸収されていく。
「何をしようと無駄だぁあああ!! 『崩壊の種子』はすべてのものを食らいつくし、消失させていく! 宝具も例外ではない!」
「あんたごときじゃあ、俺の存在の力を食いつくすなんて無理だ。誇れ、光の神と同じ死にざまをくれてやる!」
 そう言い放つと、冷香は長大な『ミストルテイン』を投擲する。『ミストルテイン』の本来の使い方は、このように本体を相手に投擲し、貫くことにある。冷香の普段の『ミストルテイン』使い方は疑似的なものであった。
 投擲武器『ミストルテイン』は主の期待に応えるかのように、空気を切り裂き、弾丸の如くザイルの元に一直線に飛んでいく。そして、
「貫けぇええええええええええええええええ!!」
 互いの全力が、今、
「貪り尽くせええええええええええええええ!!」
 激突した。
 『ミストルテイン』が『崩壊の種子』と激突すると、力が均衡したのか、両者の押し合いに発展する。その場からどちらも動かなくなった状況だ。
 だが、数秒経つと黒い絶望が、悲しみの矢を飲み込んだ。
「見ろ、所詮貴様の力なんてそんなものなんだよ!」
「あんたは存在の力を読み取ることもできないのか?」
「何を……」
 言っている。と言いかけて言葉を飲み込んだ。まだ、冷香の『ミストルテイン』の力がまだ感じられるからだ。
「馬鹿な……。何故だ、何故消滅しない!?」
「あんたの矮小な力では俺の存在の力を喰らいつくすことなんて出来ないさ」
 黒い絶望が、ゆがむ、ユガム、歪む。その歪みが頂点に達した時、黒い絶望が完全に消滅する。
「ちっ!」
 自分の眼前まで飛来した『ミストルテイン』をザイルは両手で受け止める。だが、じりじりと『ミストルテイン』がザイルの両手を押し返していく。
「俺が……、こんなところで消えるわけがないぃ……。俺はこの世のすべての王に……」
「諦めろ。所詮あんたはそんな器じゃないんだよ。……さて、そろそろ幕引きだ!!」
 それ自体が弓矢と化した『ミストルテイン』は遂にザイルの左胸に突き刺さり、風穴を空けていった。
「が、ああああ、ああああああぁぁあああぁぁああああああああぁぁぁぁぁぁ!!」
 風穴が空いた部分を信じられないように見たあと、風穴から緑色の炎をまき散らし、のたちまわった。
「あんたにお似合いの最後だ。せいぜい成仏してくれ」
 こうして“搾取の大器”ザイルはフレイムヘイズ、ヴィルヘルミナ、冷香両名により討滅された。


「っ……」
「気がつきましたか、カルメルさん」
「私は……」
「王の攻撃で気絶させられていたんです、無理はしないでくださいね」
「ザイルは?」
「俺がちゃんと討滅しておきました」
「そうで……ありますか。……冷香殿、私は戦えそうにないであります。ダンタリオンを止めてください」
「……わかりました。町の人々をお願いします」
 ヴィルヘルミナにその場を任せると、冷香はダンタリオンの元に急ぐ。いくつかの通路を駆けぬけると、床がコードに埋め尽くされている部屋に辿り着いた。
「んん~!? ザァァイルは討滅されてしまったようですねぇ」
 白衣の男がさもどうでもいいことのように言うと、部屋の中央にある巨大な装置の整備に取り掛かる。
「単刀直入で悪いが、あんたの実験を阻止させてもらうぜ」
 そういうと弓化した『ミストルテイン』を構え、存在の力の矢を放つ。
「むぅぅだですよぉ!! この装置は私かザイルしか改編することができませんん!!」
 ダンタリオンの言葉通り、冷香の攻撃は辿りつく前に消滅してしまった。
「野暮なフレイムヘイズはそこで私の実験の結果が出るのをまぁぁぁっていなさぁぁい!」
「へぇ。あいつかあんた力ならそれ壊せるんだ……」
 ごそごそと懐を探り、外で拾った赤い宝玉を取り出す。
「これな~んだ?」
「そ、それはぁぁあぁあああああ!? な、なんでフレイムヘイズがそれを持っているのですかぁ!?」
「拾った」
「ばぁああああかなぁ!!」
「なんかあんたと話していると激しく疲れる……。とっとと終りにするとしよう」
 そう言うと、赤い宝石を『世界喰らい』の装置の方に放り投げると、『ミストルテイン』で打ち抜く。すると空間が歪み、装置を飲み込んで完全に消失した。
「なぁぁあああんてことをしてくれたのですかぁ! 私の我学の結晶をぉぉぉ!!」
「いや、これ使命だし」
「まぁあああいいでしょうぅ! 次の実験に向かうとします! ドォォォミノ!!」
「はい、なんでしょう教授」
「この実験場を破棄して次の実験所に向かいますよぉぉぉ」
「あいあい。緊急自爆装置を起動させやがります」
「っ!?」
「そぉれでは機会が会ったらまぁぁたお会いしましょぉぉぉう!!」
「俺はもう会いたくないがな……」
 徒は本当に自爆装置を起動させたらしい。けたたましいサイレンと共にあたりが真っ赤に染まる。
「やっべ、逃げねぇと」
 冷香はようやくあの突飛な教授解放されると、再びかけ出す。カルメルと町の人々をこの場から遠ざけなくては……。
「カルメルさん!!」
「冷香殿!? これは一体何事でありますか!?」
「ダンタリオンが自爆装置を起動させたんです!! 町の人々を連れて早く逃げないと」
「了解であります!!」
 そう言うが早い。ヴィルヘルミナはリボンで町の人々をぐるぐる巻きにすると、出口に向かって走り出す。冷香もそれに続く形で実験上から脱出を敢行する。
走りにくい通路を抜け、実験上から脱出し、森の中に逃げ込む。するととんでもない轟音が辺りを支配した。自爆装置が起動したのであろう。
「た、助かった……・でも、やりましたね。『世界喰らい』なんてふざけた計画を阻止できて!!」
「そうでありますね」
 それは通常時と変わらないトーンの声であった。だけど、冷香がヴィルヘルミナを見ると、その顔は冷香が初めて見る穏やかな笑みであった。あまりに女性らしい笑みを見て、どぎまぎしながらも冷香はヴィルヘルミナに尋ねる。
「か、カルメルさんはこれからどうするんですか?」
「古い知人のところ……。御崎町に向かおうと思っているであります」
「そうですか……。お気をつけて」
「冷香殿も……」
 そういうと二人は握手を取り交わす。

 彼らの道が再び交わることはあるのだろうか?

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陽光のナスタチウム 楽屋裏

2008.03.23 *Sun
?「よーやく終わった・・・・・・」

?「終わったわね~」

?「まったく、どーしてこんなにもあの人は遅筆なんなんだ?」

?「さぁ? 提供より供給を優先していたからじゃない?」

?「てか、なんでこんな会話まで収録されてるんだ?」

?「それは貴方の一人称にしたせいでキャラ同士の対話が皆無だった反動じゃない?」

?「あれか、要するに全部あの人のせいと・・・・・・」

?「まぁ、いつまでも(?)表記はうざったがられちゃうから自己紹介しましょうよ」

?「自己紹介って・・・・・・タイトルと会話の流れを見ればわかるだろ?
・・・・・・。ここでごねても仕方ない、か。
ゴホン。
陽光のナスタチウムで主人公だった井上蓮です」

?「井上君を立ち直らせ、会話が目茶苦茶少なかった

蓮(なーんか自己紹介が妙なような?)

?「加藤です」

蓮「ちょっと待て!!」

加?「なにか?」

蓮「タイトル、会話の流れからいってあの人しかいないだろ!? なんで君なんだよ!」

加?「うるさいなぁ・・・・・・。あれね、あのナスタチウムに深く関係している人でしょ?」

蓮「そーだよ。ったく、ふざけていないで自己紹介すませちゃえよ」

加?「冗談じゃないの。
ふぅ、加藤改め・・・・・・

蓮(あー、ようやく自己紹介を終わらせ

?「フランソワール・ド・二世です」

蓮「誰だよ!?」

フ「花屋のディープな店員です」

蓮「あれか!? 俺の思考でちょっと出て来た花屋か!? てかあの人は日本人だったぞ!?」

フ?「・・・・・・実は親がイギリス人で日本で育ったんですよ」

蓮「いやいやいや、明らかに髪黒かったから! てかその名前に日本らしさのかけらも存在しねぇ!!」

?「まったく、そんなにねちっこく突っ込みをしても脳の肥えた人達は笑ってはくれないわよ?」

蓮「人として当然の事を指摘しているだけだぁあ!!」

?「はぁ、読者の皆さんも蓮のねちっこさに飽きてきただろうし、ちゃんと自己紹介しましょうか」

蓮「いや、お前が最初からちゃんとしてれば俺は突っ込まなくて済んだんだけどな・・・・・・」

?「悲劇の薄幸ヒロインこと、絹済栄花です」

蓮「自分で悲劇のヒロインって・・・・・・」

栄「事実なんだし、いいじゃない」

蓮「ふぅ・・・・・・本編と性格変わりすぎだろ」

栄「さて、自己紹介だけで2000バイトも使っちゃったわ。とっとと始めましょう」

蓮(普通にスルーされた!?)
「うっ、うぅ。
えっ、えーと。ここでは、ここ・・・・・・では・・・・・・」

栄「? どうしたのよ?」

蓮「何するんだ、ここ?」

栄「・・・・・・は?」

蓮「いやだって、俺も知らないもん。栄花と今まで一緒にいただろ?」

栄「そりゃあそうだけど・・・・・。今更引っ込むなんてできないじゃない。というより私のプライドが許さないわ」

蓮「じゃ、じゃあどうするんだよ? 企画なんてないぞ?」

栄「蓮、なんとかしなさい」

蓮「俺の話まったく聞いてなかったろ!? 企画ないって言ったばっかじゃん!」

栄「それをなんとかするのがあなたでしょ?」

蓮「なぁにさも当然のように言い切ってんだよ、俺にそんな企画力あるわけないだろ」

栄「・・・・・・、さて、今週もやって参りました。みなさんの疑問に答える「教えて! 栄花ちゃん&その他のQ&A」のコーナーです」

蓮「今週って毎週やってたの!? てか俺の扱いヒドッ! 仮にも俺主人公だぞ・・・・・・?」

栄「はい、早速一通目のお便りです」

蓮「無視も立派ないじめなんだぞ?」

栄「『栄花さんと付属品の皆さん今晩わ~』
はい、今晩わ~」

蓮「わ~、俺がどんどんいたたまれなくなってくー」

栄「『質問です。栄花さんが主演だった陽光のナスタチウムですが、あれの基本的なテーマはなんだったんですか?』
はい、付属品Aよろしく」

蓮「答えるのは俺なのか・・・・・・。てか名称付属品に決定?
・・・・・・え~と、あれの始まりはとあるブログなんだ。そこでHit数を記念して始まったわけなんだが」

栄「妙に歯切れが悪いわね? それだけなんでしょ?」

蓮「いや、実はな、『陽光のナスタチウム』も企画ものでな、ブログの読者さんに好きなテーマを三つだしてもらい、その中から三つのテーマに絞り込んで話を創作する『三題噺』だったんだよ」

栄「つまり、みんなでお話のテーマを出し合ったのね。
どんなテーマかは発表されたの?」

蓮「いや、隠しておいた方が面白いということで発表されなかったんだが、どうもそれが裏目に出たらしい」

栄「へ? どうゆうこと?」

蓮「最後の話、つまりエビローグのあとがきで、これこれこういうテーマでした。という発表をするはずだったんだが・・・・・・」

栄「そんなもの私が見た時にはなかったみたいなんだけど。・・・・・・もしかして?」

蓮「そう、度重なる睡魔に負けてその発表文を書き入れ忘れちまったらしいんだ」

栄「あ~・・・・・なんていうか、その、駄目人間?」

蓮「そのクエスチョンマークをエクスクラメーションマークに変えてもなんら問題がないぞ、栄花。
ここで、お便りの質問の答えに至るわけだが、あれのテーマは、
『クール』
『我田引水』
『疑心暗鬼』
だ。このテーマを書き込みしてくれたのは『クール』が、この空間の妄想主である時雨の数少ないリア友の『九尾』さんで、残りの四字熟語が当時の名前を改名し、時雨に今では『あかやん』といわれている『紅壱』さんだ。
このほかにも色々なテーマを書き込んでくれた人もいるんだぜ?」

栄「へ~、あの根暗な管理人の元にテーマを提示してくれるなんて、いい人たちなのね~。
私にはとても真似出来ないわ」

蓮「根暗かどうかはともかくとして、ありがたいことだよな。
数々のテーマを出してくれて皆さんありがとうございました。妄想主に代わって御礼申し上げます。
ほれ、栄花」

栄「わかったわよ・・・・・・。
あ、ありがとうございます」

蓮「まぁ、『我田引水』は俺の座右の銘なんだよな」

栄「残り二つはパパ達と離れ離れになってしまった時の私。ということね?」

蓮「まぁ、そうゆうことだな」

栄「でも蓮。たくさんのテーマがあったのに三つのうち二つは同じ人が考えてくれたものでしょ? なんか使わせてもらっておいて言うのも難だけど不公平じゃない?」

蓮「妄想主も最初はそう思ったんだが、自分の作ったあみだくじを妹さんにやってもらったらこの結果がでてな。公正なくじ引きで決まったのだから、問題ないだろうということで紅壱さんのテーマを使わせてもらったんだよ」

栄「へ~、そんないきさつが・・・・・・」

蓮「解答としてはこんなものでいいか?」

栄「ふん、あなたにしては上出来ね。では次のお便り。
『なんでナスタチウム本編は途中から○の一人称になったんですか?』
はい○」

○「いや、その前になんで伏せ字なんだよ!? あれか? 俺の名称は放送禁止用語か!?」

栄「実は放送コードに引っ掛かってしまうのよ。あきらめて、○」

○「最初の方目茶苦茶名前出してたよな!? あれはどうなるんだよ!?」

栄「ああ、それはよく水泳大会とかで『ぽろりもあるよ』ってあるじゃない?それと同じ感じでぽろりと・・・・・・」

○「ヒドッ! てかあそこまでの大放出は、ぽろりってレベルじゃないだろ!」

栄「まったく、冗談じゃない。そうむきにならないでほしいわね」

蓮「お前がいうと冗談に聞こえないんだよ!てか音声さん本当にピーって被せてたし・・・・・・」

栄「いい仕事するわね~、ここの音声さん。というよりちゃっちゃと質問に答えなさいよ」

蓮「うぅ、突っ込みすぎで喉が枯れてきたぞ・・・・・・。
えーと、どうして俺視点の小説になったか? だっけか?」

栄「ええ、そうよ。つまって来ているからちゃっちゃと答えなさい」

蓮「ちゃっちゃ」

栄「・・・・・・・。
さて次のお便り、『みなさん

蓮「お願い! お願いだから突っ込んで!!」

栄「まったく、なれないことをするからよ。で? 本当のところはどうなのよ?」

蓮「な~んか納得できねぇなぁ・・・・・・。
まぁ、そんなことはどうでもいい、か。
最初あの作品はSSのつもりで書き始めたんだ」

栄「SS? なにそれ?」

蓮「SS(ショートショート)つまりとても短い小説ってことだ」

栄「なんかそのまんまね~・・・・・」

蓮「話を戻すぞ。
妄想主はそんなつもりで書いていったんだが、話の導入部でかなりの長さになっちまったんだ。導入部っていうのは、俺が栄花にしばかれていた場面な」

栄「あんたが好き勝手なこというからじゃない」

蓮「蒸し返すなって。
で、だ。最初だけで結構な長さになってしまったからあの場面をプロローグということにして短編小説になったんだ」

栄「で? それが一人称になってしまったことと何の関係があるのよ?」

蓮「いや、な。短いなら三人称いけるかと思ったら、予想外に長くなっちゃったから、慣れてる一人称に変えてしまったんだ」

栄「なら最初から一人称にしておけばいいじゃない。ややこしくて仕方ないわ」

蓮「記事を投稿してからその事実に気付いたんだってよ」

栄「はぁ・・・・・。計画性がないのね」

蓮「そういうなって。別にいいじゃないか三人称」

栄「あんたはいいかもしれないわよ? でもそれに引き換え私はどーなのよ? 出番皆無じゃないのよ!」

蓮「だ、だからここで出番があるんじゃないか、気にすんなよ」

栄「ほぅ、どの口がふざけた戯れ言ほをざくのかしからねぇ?」

蓮「え? い、いや、ちょっ、ちょっとまて! お前はそんな手をボキボキならして、人に襲い掛かるようなグラップラーキャラじゃないはずだろ!? お前の攻撃はメンタル面に対してだけだろ!?」

栄「問答無用!」

蓮「い、痛い痛い!! そ、その関節はそんな方向には曲がら・・・・・・。
あっ、あっ、アッー!」


音声が乱れております。しばらくお待ちください。


栄「放送中に音声の乱れがあり、放送が中断されてしまいました。申し訳ございません」

蓮「・・・・・・」

栄「次のお便り、といきたいところですが、進行役の蓮君が、首と手首をぷらぷらと揺らし、白目をむいて意識がないようなのでこれ以上質問に答えることは出来ないようです。
大変名残惜しいですがお別れの時間ということです。
それでは皆さん来週お会いしましょう。さよ~なら~」

蓮(も、もうノリだけでこんなこと引き受けねぇぞ・・・・・)



その後この番組は、音声が乱れる前に入った、様々な関節技に対して反響があり、

「栄花おねいさんのたのしい関節技講座」

になったそうです。

めでたしめでたし?

蓮「めでたくねぇよ!?」
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陽光のナスタチウム エビローグ

2008.03.20 *Thu
さて、その後の話しをしようか。まぁ、たいしたことはおきていないんだけどな。



次の日、栄花は学校を休んだ。もう会えないと思っていた両親とまた暮らせることになったんだ、当然のことだろう。
それに伴い、栄花の人を突き放した態度も少しづつ改善された。
・・・・・・・がしかし、それを回りはまだ知らない。栄花が打ち解けても回りが警戒していては意味がない。
でも、俺は昔した約束を守りたい。それに、俺と栄花のいるクラスの連中は、なんだかんだいって栄花の心配をしていた。だから・・・・・・俺は軽いきっかけだけ作ってやる。それだけで十分だろう。



一日休んだだけで栄花は登校して来た。もう少し休むかと思ったんだが、あいつは強いな・・・・・・。
さて、感心してる場合じゃない。俺は早速行動に移した。
ただ、単純に、それはありふれたこと。だけど少し前まではありえない行為。
まわりに聞こえるように大きな声で、
「おかえり、そんでおはよう栄花」
「お、おはよ蓮・・・・・・」
ただ、それだけ。だけど、栄花が人を拒絶していた時にはまったく行われなかったこと。短いけど温かな、人と人の繋がり。
この短いやりとり。これが俺が考えた簡単なきっかけ。ただこれだけなのに、クラス全員気付いたらしい。もう今までの栄花じゃないってことに。
「おはよー、栄花」
「絹済さんおはよう」
「はよっす」
口々に朝の挨拶を交わしていく。栄花は囲まれ、顔を朱に染めながらも、挨拶をしてくれたクラスメイトに挨拶を返している。
もう安心だな。さて、自分のやるべき事を終えた俺は・・・・・・。
「寝るか」
体の至る所の力を抜いて机に突っ伏した。
所を狙ったかのように肩を叩かれた。てか実際狙われたような気がするな・・・・・・。
渋々と振り返ってみると、そこにいたのは・・・・・・・。
栄花の友人の加藤さんだった。ん~、何の用だ?
「一体どんな魔法を使ったの?」
「・・・・・・なんのことだ?」
「あ、あれね。愛の力?♪」
「ゲフッ!?」
咳こんじまった。いきなり何を言い出すんだ? ・・・・・・、ま、否定することもないか。
「・・・・・・ああ、そうとも。愛の結晶ってやつだな」
「お~、言いますね~」
「てかなんの用だ? 激しく眠いんだが」
「冷たいなぁ~。いやね、御礼を言いにきたんだよ」
「なんか俺やったっけ?」
「ちゃんと栄花を笑わせてくれたでしょ?」
「ああ、そういうことか」「そんな君にご褒美~♪」
別に礼を貰いたくてやってたわけじゃないんだが・・・・・・。そんな俺の考えが伝わるわけもなく話しを進めていく。
「栄花の誕生日って知ってる~?」
「誕生日? いや、知らないけど・・・・・・」
「あらら、てっきり知ってるかと思ったんだけどなぁ」
「ん~? いつなんだよ?」
「明後日」
「随分と急だな、おい!」
「まぁまぁ、落ち着いて~。私が言わなかったら今年も祝わずに終わっちゃうところだったんだよ~?」
「まぁ、それは・・・・・・」
確かにその通りだ。問題を解決することに切羽詰まっていて気にする余裕なんてなかったからな。
「そんで、栄花の喜びそうな物のヒントをあげようかなと思ってね」
「成る程、それがご褒美ってわけか」
「そそ、でも君からのプレゼントならなんでも喜びそうな気もするけどね~」
「でも、どうせなら本当にほしいものをあげたいしな。で? 栄花のほしいものって何だよ?」
「ほしいもの、というより、好きな物だけどね~。では、ヒントいくよ~」
ここで彼女はクイズ番組特有の妙なタメを作り勿体振る。なんかこの人、この前の時と性格が180度転換してないか?
「栄花の名前」
「は?」
「ヒントはあげたよ~、じゃね♪
おぅい栄花~、井上君が誕プレ期待しとけだって~」
そういいながら栄花の方に走り去っていった。
おいおい、どうしろってんだ。
今度は別の意味で授業に集中できなさそうだ。俺は声に出さず嘆息した。



授業一時間分の睡眠時間を犠牲にして俺が考えついたのは・・・・・・「花」だ。こんなこと、聞いた直後に気付くべきだったんだろうな。栄花の名前から連想される物といったらこれくらいしかないだろう。
だがそれでも問題がある。
「花といっても・・・・・・種類ありすぎだろ~・・・・・・」
そう、具体的にどういった花を送るかがまったく決まらない。俺がいいと思った物でも相手が気に入らない場合だってある。それにこういう好みって、男女で差が出るだろうしなぁ。
考えているばっかりじゃ決まらない。そういう結論に至った俺は図書館に向かうことにした。
・・・・・・・残りの授業時間全てを睡眠時間に変更して、な。



そんな訳で放課後。
俺はかけられる声に返事をしながら図書館に向かった。むぅ、折角だから栄花と話したかったんだけどなぁ。まぁ、これも栄花に喜んでもらうためだ。そう自分に言い聞かせた。はぁ・・・・・・。い、いや、納得してるぞ!?
司書さんに花の図鑑の場所を聞いて、早速調査に取り掛かる。
いいなと思った花の写真を見ては、栄花がそのプレゼントした花を持ってこちらを笑いかけている所を想像してみる。
駄目だ、どれもパッとしない。いや、栄花自体の素材は良いんだが、それに見合う「これだ!」という花が中々なぁ・・・・・・。
図鑑をめくるという普段しない行為のせいか、とんでもなく精神的に疲れた。適当に開いたページの上で突っ伏した。・・・・・・関係ないけど俺は学校に寝に来ているんじゃないかってくらい寝てるなぁ。
その突っ伏したページの文字をなんとな~く目で追ってみる。
・・・・・・花言葉?
ここでふと気付いた。どの花にもこの花言葉ってやつがあるのだ。花の写真ばかりに目がいっていて気付かなかった・・・・・・。
それにしても色々な言葉があるな~。今度は写真をそっちのけでページをめくっていく。
恋やら愛やら勇気やら普段口に出したら赤面してしまうような言葉が連なっている。
こんな言葉もあるんだ~。
ぺらぺらぺらぺらぺらぺら
ん?
そこで気になる言葉を発見した。その言葉は栄花にぴったりだった。それでいてその花は、栄花にとても似合っているような気がした。
そうと決まれば話しは早い。俺は席を立った。この図鑑を見るまでこの花の名前すら聞いた事すらなかったからな。俺は近場の花屋に売っていることを祈りつつ歩き出した。



栄花の誕生日当日。俺はどうにかして花を手に入れることに成功した。・・・・・・よく、売ってたなぁこれ。店員さんがディープな花マニアじゃなかったら手に入らなかっただろうなぁ。うぅ、あの熾烈なやり取りは思い出したくねぇ・・・・・・。
まぁ紆余曲折を経て手に入れたんだ。・・・・・・回想シーンを思い出すのが面倒なわけじゃないぞ!?
折角手に入れたなのだから、人前で渡すとかじゃなくてもっと雰囲気のいいタイミングで渡したいなぁ。
んなわけで、放課後に付き合ってもらうことにした。勿論即OKだ。まぁ、断られるわけがないけどな~♪
栄花の顔は少し赤い。うーん、こりゃまた保護欲を掻き立てる可愛さだ・・・・・・。
おっと、つい骨抜きにされちまったぜ。締めるところはちゃんと締めないとな。
自宅近くの広場に到着。「そんじゃここで待っていてくれ、すぐ取ってくるからさ」
「う、うん。わかった」
はにかむような返事がきた。待たせちゃ悪いな。俺は少しでも早くプレゼントが渡せるように走り出した。



まぁ、とってくること関しては時間がかからなかったんだが、どーも決心がつかなくてもたついてしまった。
栄花は所在なげに広場のぶらんこに腰を下ろしている。い、いかん。これ以上待たせちゃいけないな。そう思い栄花に近づく。
「待たせちまって悪いな」
「ほんと、時間かかりすぎよ。蓮の家そんなに離れてないでしょ?」
そういいながらも栄花は、何かを期待するかのようにそわそわしている。
「それにしても、誕生日前以て言っといてくれよ」
「だっ、だって・・・・・・」
「だって、なんだよ?」
「なんかプレゼント要求してるみたいじゃない・・・・・・」
ああ、遠慮してたのか。まったく、根はいいやつなんだけどあの頃に比べるとひねくれたなぁ。
「んなこと気にすんなよ。俺とお前の仲だろ?」
「ば、・・・・・・・馬鹿」
そろそろ反応を楽しむのはやめておくか。話しが進まないしな。
「はいよ、誕生日おめでとう」
「あ、ありがとう・・・・・・」
そういいながら恐る恐る俺から花を受け取る。まったく爆弾を取り扱うかのような慎重さだ。しかし、その渡された花を見て、笑顔になってくれた。
「これはなんて名前の花なの?」
栄花が笑顔のまま尋ねてくる。花が好きな栄花もこれは知らなかったか。マイナーな花なんだな~、これ。
俺はこの花の花言葉を見て直ぐさま栄花の顔を思い浮かべた。
だって・・・・・・、栄花のことをそのまま表しているような言葉だからな。
絶望の中で必死に抗ってようやく希望を見つけた。
辺り一面暗闇。そんな中、陽光を浴びて光り輝く花のようにまた笑うことができたんだ。
「その花はな、ナスタチウムっていうんだ」

そして、その花言葉は・・・・・・



ーーーーーーー「困難に打ち勝つ」
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陽光のナスタチウム 三章

2008.02.20 *Wed
俺にはいったい何ができるんだろう? というより俺に何かをする権利なんてあるのか?
栄花の問題は扱いが難しく、根が深く、非常にデリケートな問題だ。
そこを俺みたいな人間が割って入るべき問題なのだろうか?
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陽光のナスタチウム 二章

2008.02.06 *Wed
俺は栄花に言われたことがまるで理解できなかった。だって意味が分からないだろ? 一年の時強引に助けておいて、いきなり突き放す態度なんて・・・・・・・。
その時間の休み時間は何がなんだかわからなくて、結局のところ話すことはできなかった。むぅ・・・・・・・我ながら情けない。
それになんかああ言われた直後に話すというのも・・・・・・・なんか気まずいしなぁ。なんだか本格的にへたれなような気がしてきたぞ。
でも、行動をしないで我関せずなんてこともできなくて・・・・・・・。だから俺は自分にできることにした。
俺にできること。それは栄花に何が起きたかを知ることだ。あいつが・・・・・・・なんの理由も無しに人を拒絶するわけがない!
 ガキっぽい。自分でもそう思う。だけど・・・・・・・、自分でもどうしてか分からないけど、俺はあいつを信じたい。
まぁ自分に出来ることをコツコツとだ。俺は二年の時に栄花と同じクラスだったやつに話を聞いてみることにした。
しかし、結果は押して知るべく。成果はまったくと言って良いほどあがらなかった。聞いたやつの返答の殆んどは、
「知らない」
「わからない」
だった。
完全に手詰まりになってしまった。その考えが余計に俺を焦らせた。もとからそんなに計画を考えず、「なんとかなるだろう」と考えていたので代々案もなく机の上でひじをつき、頭を抱えていた。
・・・・・・・・・・・・・・そんな時に、いきなり背中を軽くつつかれた。ん? 誰だ? 一瞬栄花かと思い、勢いよく振り返ったものの、俺の期待していた顔とは別の顔があった。
「え、・・・・・・・と? 加藤さん・・・・・・・だっけ? なにかようかな?」
そう、彼女は栄花と割りと仲がよかった加藤さん・・・・・・・だったと思う。でもその栄花の友達が一体俺に何のようだ?
「どうして・・・・・・・」
「え?」
「どうして栄花について聞き込みをしているの?」
ああ、そうか。俺みたいのが自分の友人を調べ回っているのを快く思っていないのか。
 ん~・・・・・・・今の俺の評価ってそんなに低いのか。自分の胸の内で嘆息し、答えを返す。
「・・・・・・笑っていて・・・・・・・ほしいんだ」
「え?」
今度は彼女が疑問の声を発した。ふぅ・・・・・・。まぁこんな反応は想定の範囲内だ。彼女の疑問を解きほぐすために、言葉を続ける。
「借りがあるんだよ、あいつに」
「借りって?」
「・・・・・・・最悪だったときの俺をひっぱたたいて少しはまともな俺にしてくれたんだよ」
・・・・・・・なんかすんげぇはずい。それに的はずれなこと言っているような気もするし。だけど、それを聞いた加藤さんの表情が和らいだ。
「つまり・・・・・・・井上君は栄花の心配をしているってこと?」
「さぁな。俺が勝手にやっていることだしな」
「ううん、誰かを思って行動できるのは、とっても立派なことだと思うよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・そうか」
ん? そういや加藤さんに栄花のこと聞いたっけか。二年のとき彼女も栄花と違うクラスだったから聞いていないような気がする。・・・・・・・聞いてみるか。
「あのさ、どうして栄花がああなっちまったか知ってるか?」
俺の質問を聞くと、先程までの微笑が嘘のように顔を俯かせてしまった。
・・・・・・・今までのやつらと反応が違うな。何か知っているのかもしれない。そう思うと自然に口調が早くなってしまう。俺は前置きを置かずに栄花について聞くことにした。
「単刀直入で悪いんだが・・・・・・・。栄花がどうしてああなっちまったか、君は知っているのか?」
思わず唾を呑んでしまう。だが、彼女の返答は俺の想像とはまったくの別物だった。
「・・・・・・・知らないの」
「え~と。知らない?」
「うん・・・・・・・」
「なっ! ほ、本当に知らないのか!? 何か知っているからそんな浮かない顔をしているんじゃないのか!?」
「逆だよ、井上君」
「・・・・・・・?」
「親友だと思っていた娘が、苦しんでいるのに何も相談してくれない。そして私はなにもしてあげられない。すごく、もどかしいよ・・・・・・・」
思わず顔をしかめた。何てことだ・・・・・・・。彼女は知っているから苦しんでいるんじゃない・・・・・・・。「知らないからこそ」悩んでいたんだ。俺は何て無神経なことを・・・・・・・!
「その・・・・・・・すまない。君の事情も知らず、勝手に喚いたりして」
「ううん・・・・・・・、大丈夫。ただね、ちょっと気にかかる事があって声をかけたの」
「気になること? なんだい? それは?」
「私も聞いた話なんだけど・・・・・・・。栄花いきなり性格が変わってしまったのは、ある日を境にしてのことらしいの」
「・・・・・・・なに?」
これは・・・・・・・思わぬ大ヒントじゃねぇのか? 手がかりが見つかった! とは言い切れないけど、それに繋がる可能性が大きいんじゃないのか? 否応なしに期待が高まる。
「聞かせてくれ、どういう意味だ?」
伝える言葉を慎重に吟味しているのか、ゆっくりとした口調で喋り始める。
「あのね、栄花は去年の五月・・・・・・・中旬くらいかな? 栄花は無断で一週間くらい学校を休んだの」
「あの栄花が? ・・・・・・・ああ、すまない。続けてくれ」
「うん、それでね。学校にまた来はじめた時にはもう・・・・・・・」
「あの性格になっていた、と?」
「うん、きっとその一週間のうちになにかあったんだと思う。本人は風邪と報告したみたいだけど・・・・・・・」
一週間・・・・・・・ねぇ。ここからは俺次第ってとこかね。
「ありがとう、君のお陰でなにかわかるかもしれない」
「栄花を・・・・・・・私の親友をよろしくお願いします!」
そういうと、彼女は頭を思いっきり下げた。
ゴツン!
「うぅ~・・・・・・・」
なんか鈍い音が辺りに響いた。それに涙目で加藤さんがこちらを見てくる。
・・・・・・・この人、しっかり者に見えて結構・・・・・・・
「な、何ですか?」
ホッペから首筋まで、綺麗に真っ赤だ。ここはフォローするべきか迷ったが、面白そうだからスルーしよう。
 キーンコーンカーンコーン
・・・・・・・と思った俺に反抗するかの様にチャイムが鳴っている。ああ、つまんね。
加藤さんは身を縮めながらそそくさと、席に戻ってしまった。
まぁいい、きっかけをつかむことはできた。あとは俺次第だ。絶対に・・・・・・・あの頃の栄花を取り戻す!
俺はそう決意しながら拳を握りしめた。

授業中の時間の流れ方の遅さにイラつきながらも、ようやく授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
俺はまず、栄花の休んだという一週間に、何があったのか調べるべく図書室に向かった。この高校は確か学校行事や、その年に起きた出来事を記録するための記録帳が図書室に置かれていたはずだ。
なにもないのでは? という恐怖を振り払うかの様に俺は図書室に急いだ。

司書さんに、五月の記録のある本棚を教えてもらい探すこと約三分。
・・・・・・・あった。五月分の記録をぺらぺらとめくる。栄花が休んだ一週間分の記録もあるといったらある。
 だが・・・・・・・。これは、あると言えるのだろうか?
栄花の休んだ一週間分の記録・・・・・・・。それは・・・・・・・

全くの白紙だったのだ。

「っ!?」
おいおい、唯一の手がかりだと思っていた記録帳が白紙って・・・・・・・。
なにかの間違いだ。そう思い、司書に話を聞く。
「あの~、これなんで白紙なんですかね?」
「ああ、それは簡単なことだよ。その日にはなにも行事がなかった。それだけだよ」
「そ、そうですか・・・・・・・。ありがとう・・・・・・・ございます」
思わず苦い顔をしてしまう。念のため、生徒会発行の新聞もみてみるが、取り立て栄花に関係のあるような行事はないようだ。
これは・・・・・・・学校は関係ないということか・・・・・・・?
一体何が原因だっていうんだ。
そんな俺の胸中の疑問に答えてくれる人はいなかった。

重い足取りで帰宅する。せっかくの手がかりをまったく活かせていない。それが原因なのだろう。実際のところ手詰まりだし。
家に手がかりがあるとは思えないしなぁ・・・・・・・。
母さんに飯はいらないのかと聞かれたが、どうも食欲がわかないな。
むぅ・・・・・・・以外に図書室での作業が響いたようだ。抗いがたい睡魔に襲われている。今の俺にそんな強力な睡魔に対抗ができるわけもなく・・・・・・・。心地よい疲労感と倦怠感に身を委ね、ベットに倒れ込んだ。
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